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6月に寄せて

 今年も折り返し地点に差し掛かっています。ここで去年のNAMIの活動を振り返ってみます。

 5月には新型コロナウイルス流行と同時に、いち早く「Zoom特別セミナー」と題して、COVID-19に関する医療情報、感染予防対策、遠隔医療通訳に関する情報をお伝えしました。全国から200名のみなさんにご参加頂きました。ありがとうございます。

 また、感染拡大防止のため、多くの自治体や病院では、派遣型通訳の受け入れを中止しました。そこでNAMIでは、医療通訳者に遠隔通訳に慣れてもらおうと、クラウドファンデイングREADYFORの助成金を受けて、「感染症対策遠隔医療通訳入門」研修会を8月から11月にかけて12回開催しました。全国の団体登録通訳者を対象に、8言語、合計365名の方が全国からZoomで参加下さいました。

 内容は、新型コロナウイルスの基礎知識、遠隔医療通訳の心得等の講義、その後に言語別模擬通訳練習を行いました。シナリオは、現場に即したシナリオになるよう保健所長や発熱外来勤務の医師にご協力頂き、「保健所:外国人からの問合わせ電話を通訳する」「病院:発熱外来での通訳」等を練習しました。これほどの大規模医療通訳研修は、おそらく日本では初めてだったのではないかと思います。

 国際交流協会やNGOに登録されている医療通訳者は、対面型の通訳訓練が基本です。病院で患者と合流した時に、自己紹介や守秘義務、逐次通訳であることをクライアントに伝える練習をします。また円滑なコミュニケーションのための通訳技術、職業倫理なども学びます。

 しかし会話は言葉だけでは成立しません。相手のジェスチャー、目線や声の強弱、トーンや沈黙などの非言語メッセージからも情報は発信されます。クライアントから発信される言語・非言語メッセージを統合して医療通訳者は訳します。しかし電話通訳では、非言語の情報が受け取れません。資料や画像の共有ができない、またクライアントの表情も読み取ることができません。たとえビデオ通訳であっても、医師と患者の間の一瞬の間、表情を汲み取ることは難しいでしょう。通訳者と患者間のアイコンタクトもなかなか難しいです。

 また、対面型の医療通訳者からは「寄り添いができない」との声が多く上がりました。対面型と遠隔通訳の両方を経験した医療通訳者たちが、遠隔通訳では「足りない」と感じていることが何かを言語化できれば、寄り添いが必要とされる場面は対面型医療通訳で、言語だけの対応で十分な場合は遠隔医療通訳を利用する、といった通訳の使い分けが、コロナ終息後にはできそうです。

 しかし、たとえ「寄り添い」ができなくても、「非言語情報」が使えなくても、コロナ禍で医療通訳が利用できるのと、できないのでは大違いです。この非常事態を乗り切るためには、遠隔医療通訳もフルに活用して、日本語が不自由な外国人患者の医療アクセスの遅れを防ぐ必要があります。

 そのために、今年NAMIができることは何か?今や全国にいる310名のNAMI会員ができることは何か?今年の残り7ヶ月も問い続け、走り続けたいと考えています。(N.M.)

 

Humans are constantly interpreting additional cures emitted by others and using these new cues to see if they are consistent with those previously emitted and with the imputed role of others. (J.H. Turner, The structure of Sociological Theory)