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「やっぱりもどかしい」

 職場でも、プライベートでも人と会うときにマスクをし続けることになって1年以上経った。病院で仕事をする立場から、今までもインフルエンザの流行期(10月くらいから3月くらいまで)には職場ではマスクが義務付けられていたので、1年のうち半分近く職場ではマスク生活だったのだが、それ以外は自分自身のアレルギーのためにお花見に時期を越えるまで、で済んでいた。

 

 ソーシャルワーカーという職業柄、毎日多くの方と直接会話をし、電話をかけるのだが、高齢者を始め聞きづらい障害をお持ちの方にはとても伝わりにくい。比較的滑舌は良い方だと思っているのだが、それでもマスク越しの声はこもり、電話が30分も続くと喉にこたえる。中には、私の声が聞こえないのにご自分のマスクを外して「えっ?」と聞き直す高齢者の方もいてコントのようなことが起こったりする。

 

 日本語を母語とする方との会話でさえこの状態、通訳さんを介しての会話はなおさらで、派遣を依頼している団体で一時期派遣が止まり、電話通訳を依頼することになった時にも、電話なら投薬だけ受けるので依頼しない、という選択をされる方もいた。そのような方は機械翻訳などさらに利用したがらない。日頃はできるだけ教育を受けた通訳さんの依頼を勧めている当院でも、家族や知人の方へのご協力もお願いすることも増えた。

 

 ビデオ通訳の方が電話より良い、と利用する方も増えたのだが、比較的若い世代でも電話もビデオも希望しない、何とか家族に休んでもらうという選択をされた方もいた。もちろんマスクの聞き取りづらさはあるのだが、それでも派遣通訳を希望されるということだ。

 

 医療機関での通訳さんや職員の感染予防の方法が完全に戻るということはないだろう。1年中マスクを外せないのか…と内心覚悟もしている。しかし、相手の表情などに気を配り、自分も相手に安心感を与える笑顔を見せたいと思って仕事を続けてきた私にとって、初対面から時には最後まで相手の本当の顔が見えず、目元だけでせめてもの表情を見せている現状は、やっぱりもどかしくて仕方がない。

(M・I)