長年携わってきた医療通訳を思い返すと、医療者と患者との意思疎通をサポートする時は現場の喜怒哀楽を共にする時間でもある。一方、中立的立場を貫き、感情移入しないことは医療通訳者として大事な心構えである。
今回は医療通訳現場の外で日頃の思いを呟いてみたいと思う。
【訳者と役者】
現場で通訳者は一人で医療者と患者の二役を演じている。通訳の事前準備は役作りのような作業でもある。しかし、台本はないので現場に入ってからいきなり本番になる。適切な訳出や状況判断を求められ、度々実力を試された経験から、日頃の自己研鑚と仲間との切磋琢磨の大切さを思い知らされた。
【共にいる】
「患者が泣いたら通訳者も泣きますか?」と時々聞かれるが、この質問に正解はな い。厳しくかつ難しい現場では、医療者と患者の言葉を的確に訳出する際に
通訳 者自身の気持ちを意識する余裕はないというのが私の経験。一方、患者の
思いに共感すると共に一緒に泣くのではなく、患者の涙を拭いてあげられるよう
心掛けている。
【自己点検】
通訳者も生身の人間、難しい現場実践の前、あるいは全力投球した後、
プレッシャー、ストレスや疲労が募っても不思議ではない。時には自己点検して
自分をいたわることが大事。私は各医療機関の近くでお楽しみスポットを見つけたり、
医療通訳仲間と手芸を楽しんだりしてモチベーション維持している。
「現場では一人だけど一人じゃない」、私は現場に育てられて仲間に
支えられている。
(P.S)
コメントをお書きください