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日本社会制度の中の外国人コミュニティ

 ネィティブの互助グループ主催のコミュニティ通訳の研修会において、日本や自治体の制度についての説明をすることがあります。終日の研修会なので、美味しいブラジル料理やペルー料理のお弁当ランチを頂くことは私の楽しみの一つになっています。

 

  コミュニティ通訳は生命や生活を支える通訳ですが、行政、教育、福祉、医療など活躍場面は多義に渡ります。通訳者は外国人の困りごとにおける専門職のアドバイスを、外国人にわかり易く伝える役割ですが、その通訳する事項の知識や情報が体系化されていないまま、日々の業務に忙殺されていることも多いと思います。知識を体系化することは、問題領域の位置付けと別の知識との関連性や全体像を把握する上での基盤となります。

それにはオブザーバー、もしくは「メンター」のような存在が不可欠だと考えています。それも母語文化が異なるメンターです。

 

 ネィテイブのコミュニティ通訳者は、日常における情報でも日本語による情報には疎遠となることが多く、災害時を含む緊急時など非日常の情報の入手方法や対処方法が不足しているように思われます。そんな彼等に日本の社会制度、システムとその動向について、定期的に情報提供することは、日ごろ母語による感情労働で精神的疲弊に晒されているコミュニティ通訳者にとっては、自己の感情と知識の整理が可能となり、コミュニティと自分自身の目指す方向性が明確化されることにつながります。

 

 情報量の少なさは噂や偽情報が蔓延する原因となります。「外国籍は○○適用にならない」「○○ならば○○が貰える」等々、コミュニティ通訳者でさえ真偽不明な情報に振り回されているように感じます。冒頭の研修会の参加費は5回で1万円ですが、半径100Km以上の遠方から参加されることも珍しくありません。因みにその日は暴風警報発令中にもかわらず60名のコミュニティ通訳者が参加されました。

コミュニティ通訳を含む、行政通訳、医療通訳においては、通訳コーディネーターとは別にメンターが傍らに存在することは、日本社会や外国人コミュニティにとって必要なことだと感じています。(M.I)

 

  メンターとは *

Mentor。「助言者」「相談相手」「師匠」を意味します。新入社員や後輩に対し、職務上の相談にとどまらず、人間関係、身の処し方など個人的な問題まで広く相談に乗り、助言を与える人。

 

出典 『日本の人事部』人事労務用語辞典について