医療通訳者は医師を始め医療従事者の説明が長く続き始めると 途中でとめなければならない、と教えられます。 あまり長くなると前の方を忘れてしまう可能性がある あるいは自分の書いたメモが読めなくて混乱するなどの理由から正確な通訳が望めなくなるからです。自分の能力の及ぶ範囲を知っておき、そこで止まって頂く。そこまでを訳してまた次に進む、この繰り返しです。
あるロールプレイ練習に参加した時のこと。
大腸検査の説明をする場面がありました。
日本文で3,4ページにもおよぶ長い説明をその通訳は一回も止めずにメモを取っていました。まだ行くの?まだ行くの?と全員がはらはらしていたと思います。そして、さあ、どうするのだろうと皆がかたずを飲んで見守る中、この通訳さんは見事にこなされました。すごい!素晴らしかったです。後で聞いてみたところ、この方は看護師さんであり検査プロセスを熟知していますから、とのことでした。
でも少し考えなくてはならない面もあるかもしれません。 看護師の説明が続く中、患者はかやの外。人によっては不安になったり集中力が途切れる方もいるでしょう。途中で待ち切れなくなって質問を挟む人もいてそうするとその対応に追われ 本来の通訳しなければならない部分がおろそかになる可能性もあります。やはりここはたとえ自分が間違いなく通訳できる自信があっても ある程度のところで止まって訳したいと私は思います。患者さんも確認できますし そこでタイミングよく質問も出来ます。もし患者さんの理解の方向性が違っていたら修正も出来ます。
ところで、途中で止まってもらう方法も千差万別です。もうこれ以上は無理、と思ったら医師の説明にかぶせて訳し始めてしまう、それを何回か繰り返すうちに医師のほうでも通訳の能力がわかり、途中で止まってくれるようになる、というやりかた。「先生、あまり長くなると訳せなくなります。ここで通訳の時間をいただけますか?」と断ってから訳すというやりかた。手を挙げて合図をして止まってもらうやり方。 私は新人の頃、途中からかぶせていました。 焦りがあったのだと思います。今ではこのやり方は少し乱暴かなと思い、待ってほしい旨を口頭で伝えるようにしています。しかし人間には話すリズムがありますから 待って欲しいとお願いしたにもかかわらず 「いや、ここだけは喋られてくれ」とおっしゃってご自分の言いたいことを一気に話された医師もいらっしゃいました。そんな時はひたすらメモに徹するしかありません。
最近は医師の中にも通訳を使い慣れてこられた方が出てきました。適当な所で区切って下さり、「じゃあここまで」と言って時間を下さる方、「次も必ず通訳と一緒に来るように」と当てにしてくださる方。
これからますますニーズが高まる医療通訳者がいいパフォーマンスが出来るような環境をユーザー教育の観点からも考えたいです。(Y.Y)
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