医療通訳として独り立ちして十年以上の年月が経ちました。
医療という専門性の高いかつ非日常的現場での実践に対して、経験を
蓄積しながらも事前準備は欠かせない作業です。
現場において医療通訳は医療者と患者両方の通訳を担当し、所謂「一人
二役」を演じます。そのためにコーディネーターから依頼を引き受け
ると、診療科、病名、受診目的などの情報に基づいて準備し始める
のです。医療知識は様々な情報源を活用して準備することができます。
が、患者という役作りは容易ではなく、殆どぶっつけ本番です。
私の場合、医療機関でMSWを通して患者さんと対面した瞬間から如何に
患者役を演じるかの心構えは、患者さんから如何に「安心と信頼」を
得るかということです。
安心感:患者さんに「您好」二文字に込められている全力でサポート
する通訳の思いが伝わるよう、非言語的表現、例えば笑顔、口調、
目線、距離などを大切にしています。
信頼:診察の待ち時間を利用して患者さんの話に耳を傾けること、
異国で病を患う不安を抱えている患者さんにとって母語で会話しながら
ご自身の気持ちを整理し、不安を和らげる場合がありますので、待合室
は通訳と患者との信頼関係を構築する大事な場所と考えています。
診察室に入ってから、通訳は脇役となり、主役の医療者と患者さんとの
意志疎通の懸け橋となります。医療通訳者が寄り添うのは、医療者だけ
ではなく、患者だけでもなく、私たちは現場のすべての方々に寄り添う
のです。(PS)
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