女性のライフイベントにおける出産・育児、そして介護等と、社会活動を通じた「学ぶ喜び」の両立で苦労されている(いた)数多の女性を垣間見てきました。医療通訳の研修の場においても例外ではありません。小さなお子さんの面倒を見てもらえる人がいないため、自己研鑽の機会を失った経験がある方も多いと思います。
研修会に小学生のお子さんを伴って来られる場合があります。お母さんが前方で受講している後方で、お子さんが宿題やドリル、ゲーム(もちろん消音です!)などをしながら、お母さんと一緒の空間にいるという構図です。時には複数のお子さんが一緒になり、講義室の外で一緒に遊ぶこともあります。
親の働く姿を見せるという「子ども参観」という職場体験の前段階に当たるこの風景が、私はとても好きです。お母さんだって学びたい!働きたい!社会に貢献したい!の「見える化」です。
そんな後ろでお母さんの母語であるポルトガル語を勉強していた、日本生まれ日本育ちの子も大学生になり、ブラジル留学やコミュニティ活動に勤しみながら、自分自身の将来を考えるようになりました。
ある派遣団体において二十歳で在住10年の専門学校生のラテン系青年が医療通訳として養成され活躍していました。似て非なるラテン語の妊婦さん担当となり異常分娩だと判明しました。その時彼は、自分は異言語であり子供もおらず経験値も少ない異性なので、妊婦さんと同じ言語の同性の通訳に担当変更を申し出たところ、「あなたを信頼している。異言語であってもあなたに通訳をして欲しい」と言われ嬉しかったと話してくれました。そしてそんなコミュニティの橋渡し役になりたいという希望も持っていましたがIT分野の職種を探そうと思う、と苦しい胸の内を語ってくれました。
日本社会で育った彼らが、十分な日本語を話せない、複雑な社会保健福祉制度が判らない家族やコミュニティの役に立ちたい、日本社会との橋渡し役になりたいという、ごく自然なモチベーションを拠り所とする「医療通訳者」を生業(なりわい)の職業選択の一つとしたい・・・
業として生計を立てられる職種にしていくことも『NAMI(全国医療通訳者会)』のミッションのひとつだと思っています。(m. i.)
コメントをお書きください